管理職や専門職の採用では、候補者の経験や実績が採用判断に大きく影響します。一方、履歴書や職務経歴書に分かりにくい記載があっても、直ちに経歴詐称と判断することはできません。
この記事では、採用候補者の申告内容に相違が見つかった場合の確認方法を、調査モデルとして紹介します。
この記事は調査モデルです。
採用調査で確認する項目、調査の流れ、結果の整理方法を分かりやすく紹介します。
調査モデルの概要
- 依頼者:中小企業の採用担当者
- 対象者:管理職候補者
- 調査目的:履歴書・職務経歴書に記載された職歴等の確認
- 主な確認項目:在籍期間、役職、担当業務、公開情報との整合性
- 本人同意:あり
- 調査費用:70,000円(税込)
- 調査期間:7~10営業日
費用と期間は、確認項目、勤務先の数、確認先の対応、国内・海外の別などにより異なります。
ご相談
依頼企業では、新規事業部門の管理職候補者を採用する予定でした。
候補者は、前職で約8年間勤務し、そのうち4年間は部門責任者として新規事業の立ち上げを担当したと説明していました。面接での受け答えに大きな問題はありませんでしたが、履歴書と職務経歴書で役職への就任時期が異なっていました。
また、候補者が説明した事業実績について、前職企業の公式サイトや公開資料では十分に確認できませんでした。
採用担当者は、次の点を懸念していました。
- 管理職としての経験年数が正しいか
- 在籍期間に誤りがないか
- 担当したと説明する事業が実在したか
- 単純な記載ミスなのか、意図的な虚偽なのか
- 入社後に重要な経歴の相違が判明するリスクを減らしたい
一方、候補者の家族、出身地、思想信条、私生活など、職務に関係しない事項を調べる意図はありませんでした。
調査前に企業側で整理したこと
採用調査は、候補者について何でも調べるものではありません。まず採用予定の職務と確認項目の関連性を整理しました。
今回の募集職種では、部門の予算管理、部下の評価、新規事業の進行管理を担当する予定でした。そのため、管理職としての在籍期間と担当業務は採用判断に直接関係すると考えられました。
企業側では、次の内容を候補者へ説明し、書面で同意を得ました。
- 調査の目的
- 確認する職歴と期間
- 外部の調査会社へ確認を委託すること
- 提出資料と公開情報を照合すること
- 調査結果を閲覧する社内担当者
- 情報の利用目的と保管方法
本人同意があっても、採用選考に必要のない情報まで確認できるわけではありません。確認範囲は職務に必要な事項へ限定します。
調査前に提供された情報
依頼企業から、候補者本人の同意を確認したうえで、次の資料が提供されました。
- 履歴書
- 職務経歴書
- 候補者が提出した在籍証明書
- 資格証明書の写し
- 面接時の説明をまとめた記録
- 採用予定の職務内容
- 確認してほしい項目の一覧
調査会社へ提供する資料は、必要な範囲に限定します。マイナンバーや健康情報、家族情報など、調査に不要な情報が含まれる場合は、あらかじめマスキングします。
調査
1.履歴書と職務経歴書の照合
最初に、提出された資料の記載を時系列で整理しました。
その結果、勤務先と在籍期間は一致していましたが、役職について次の相違がありました。
- 履歴書:入社4年目から部門責任者
- 職務経歴書:入社5年目から部門責任者
- 面接時の説明:管理職経験は約4年間
1年の違いが、単なる記載ミス、役職名の変更、代理職の期間、正式な辞令の時期などによる可能性もあるため、この段階では虚偽と判断しませんでした。
2.本人提出資料の確認
在籍証明書では、勤務先と在籍期間を確認できました。ただし、役職や担当業務までは記載されていませんでした。
資格証明書については、募集職種に必要な資格の名称と有効性を確認しました。確認対象ではない資格や私的な講座の受講歴までは調べていません。
3.公開情報の確認
前職企業の公式サイト、過去のニュースリリース、法人に関する公開情報などを確認しました。
候補者が担当したと説明する新規事業自体は、前職企業の公式発表から存在を確認できました。一方、公開資料には担当者の氏名や役職が掲載されておらず、候補者が責任者だったことまでは確認できませんでした。
公開情報に氏名がないことは、その業務を担当していなかった証拠にはなりません。
4.確認先への照会
候補者本人の同意書があることを示したうえで、前職企業へ在籍確認を依頼しました。
前職企業からは、在籍期間についてのみ回答があり、役職、評価、退職理由、担当業務については回答しないという方針が示されました。
確認先が回答しない場合、その事項は「確認できなかった」と記録します。回答拒否を候補者に不利な事実として扱うべきではありません。
5.候補者への追加確認
確認できた事実と未確認事項を採用企業へ中間報告し、役職時期の相違について候補者本人へ追加資料と説明を求めることを提案しました。
候補者からは、正式な部門責任者への就任前に約1年間、責任者代理として業務を担当していたとの説明がありました。
追加で提出された社内辞令の写しでは、正式な就任時期は職務経歴書の記載と一致していました。履歴書には、代理期間を含めた年月を記載していたことが分かりました。
調査結果
この調査モデルでは、次のように結果を整理しました。
確認できたこと
- 申告された企業への在籍
- 在籍期間
- 募集職種に必要な資格
- 候補者が説明した新規事業の存在
- 正式な部門責任者への就任時期
- 就任時期の相違が生じた理由
確認できなかったこと
- 新規事業における候補者個人の具体的な成果
- 前職企業内での人事評価
- 部下や同僚からの評判
- 退職理由の詳細
申告内容と相違していたこと
履歴書に記載された管理職の開始時期は、正式な役職就任時期より約1年早いものでした。
ただし、候補者から追加説明と資料が提出され、責任者代理として業務を担当していた期間を含めた記載であることが確認されました。
調査報告書では、「経歴詐称」と断定せず、各資料の記載、候補者の説明、確認できた事実を分けて記載しました。
調査後の判断
調査会社は採否を決めません。採用企業が、募集職種、社内基準、候補者の説明内容を踏まえて判断します。
この調査モデルでは、依頼企業は次の対応を行いました。
- 候補者へ記載方法の修正を依頼
- 責任者代理として担当した業務範囲を再確認
- 正式な管理職経験は3年間として評価
- 入社後の職務権限と試用期間中の評価項目を明確化
- 取得した調査資料の閲覧者と保管期限を限定
相違が見つかったことだけで不採用にするのではなく、その内容、理由、職務への影響、本人の説明を確認しました。
この調査モデルのポイント
相違と虚偽を区別する
履歴書と職務経歴書の記載が異なっていても、直ちに意図的な虚偽とは限りません。
会社の合併や名称変更、出向、派遣、契約形態の変更、役職代理の期間などにより、記載方法が分かれることがあります。資料と本人の説明を照合することが重要です。
確認できないことを明確にする
前職企業には、候補者に関する問い合わせへ回答する義務があるわけではありません。本人同意があっても、社内方針により回答を得られない場合があります。
確認できなかった事項を、問題があった事項として扱わないことが必要です。
風評を採用判断に使わない
近隣や関係者への広範な聞き込みは、本人の適性・能力と関係しない情報や、真偽不明の風評を集めるおそれがあります。
採用調査では、募集職種に必要な客観的事項を中心に確認します。
本人へ説明の機会を設ける
相違が見つかった場合は、候補者本人へ確認し、追加資料を提出する機会を設けます。本人へ確認せず、一つの情報だけで採否を判断することは適切ではありません。
採用調査で確認しない事項
この調査モデルでは、次の事項を調査対象に含めていません。
- 本籍・出生地
- 家族の職業、収入、学歴、健康状態
- 自宅周辺の生活環境
- 宗教、支持政党、思想信条
- 労働組合への加入状況
- 病歴などの健康情報
- 職務と関係しない私生活
採用候補者の調査は、本人の適性と能力に関係する必要な項目へ限定します。
詳しい考え方は「採用候補者の経歴確認はどこまでできる?採用調査の範囲と注意点」で解説しています。
採用経歴調査の費用
SD Research
調査事務所の採用候補者の経歴等の確認は、1名30,000円~100,000円(税込)程度が目安です。
この調査モデルでは、複数資料の照合、公開情報の確認、確認先への照会、報告内容の整理を含め、70,000円(税込)です。
実際の料金は、次の条件によって異なります。
- 確認する勤務先の数
- 学歴・資格等の確認項目
- 国内または海外の確認先
- 提供資料の量
- 調査期間
- 報告方法
通常の調査報告書を作成する場合は1案件30,000円、簡易報告は無料です。調査開始前に確認項目と料金をご案内します。
詳しくは「調査料金」をご覧ください。
まとめ
採用調査で職歴の相違が見つかっても、直ちに経歴詐称と断定することはできません。提出資料、公開情報、確認先から得られた回答、候補者本人の説明を整理し、確認できた事実と未確認事項を分けることが重要です。
SD Research
調査事務所では、募集職種と確認目的を伺い、本人の適性・能力に関係する必要な項目へ限定して調査方法をご案内します。
企業・採用調査全体については「企業・採用調査」、報告書の内容については「調査報告書とは?」もご覧ください。
採用前に確認したい事項がある場合は「無料相談・お問い合わせ」からご相談ください。
調査で終わらせない。その先の未来へ。
SD Research 調査事務所

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